2054年問題とは?2025年問題、2030年問題、2040年問題との違いをわかりやすく解説

2023年05月02日 08:30 #セカンドキャリア支援

高齢化の進行は先進国に共通する問題ですが、とりわけ日本では深刻な社会問題といえます。理由は、高齢化の進行が前例のないペースで加速しているからです。特に、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)の減少は顕著であり、1995年には過去最多の約8,716万人を記録したものの、2022年9月には約7,395万人へと急減しました。つまり、日本の生産年齢人口は過去27年間で1,300万人以上減少しているのです。

 

高齢化は今後、進行のスピードを加速していくことが予測されており、2025年・2030年・2040年・2054年が区切りの年となります。この記事では各々の年にどのような問題が起こり得るのか、企業がとるべき対策とあわせてわかりやすく解説します。

 

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■「2054年問題」とは?

■2025年問題、2030年問題、2040年問題との違い

■超々高齢化社会に向けてとるべき対策とは?

■まとめ

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■「2054年問題」とは?

 

「2054年問題」とは、生産年齢人口が減少する反面、75歳以上の人口が2054年まで増え続けるという問題です。国立社会保障・人口問題研究所が公表する『日本の将来推計人口(平成29年推計)』によると、75歳以上の人口は2054年時点で2,449万人になると推測されており、全人口の25%が75歳以上の高齢者となります。

 

つまり、2054年の日本は4人に1人が75歳以上という、史上例を見ない「超々高齢社会」となるのです。現状では、65歳以上が高齢者とされていますが「高齢者」という用語に明確な定義はありません。今後ますます加速する高齢化を考えると、65歳以上を高齢者とする一般的な見方も変わり、75歳以上や80歳以上が高齢者であると定義し直される可能性も高いです。

 

■2025年問題、2030年問題、2040年問題との違い

 

日本の高齢化やそれに伴う社会問題には「2025年問題」「2030年問題」「2040年問題」と呼ばれるものもあります。各々の年にどのような問題が起きるのか「2054年問題」との違いとあわせて解説します。

 

参照:総務省統計局『統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-』

 

●「2054年問題」と「2025年問題」との違いとは?

 

団塊の世代が75歳以上に達する2025年には、後期高齢者(75歳以上)の人口が2,180万人まで増加し、全人口の17.8%に達すると推計されています。全人口に占める割合が大きい団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となると、医療・介護関連費が急激に増加します。このことが経済や社会に大きな影響を与える問題を「2025年問題」といいます。

 

団塊の世代とは、第一次ベビーブームの時期(1947〜1949年)に生まれた世代です。この間の年間出生数は約270万人を記録し、3年間で約810万人も新生児が生まれました。他の世代と比べても突出して人口が多く、自ずと日本社会に与える影響も大きくなるのが、団塊の世代の特徴です。

 

2054年問題との違いは、2025年は高齢者人口が増加するスタートの年に過ぎないという点にあります。75歳以上の高齢者は2025年以後も増え続け、2030年代には一時落ち着くものの、その後2054年にかけて増加する見込みです。

 

関連記事:超高齢化社会が及ぼす影響とは?2025年問題や企業が取り組むべきことを解説

 

●「2054年問題」と「2030年問題」との違いとは?

 

2030年には65歳以上の高齢者が3,716万人となり、全人口の30%に達すると推測されています。その反面、生産年齢人口は6,875万人となり、7,000万人を割り込んでしまいます。コロナ禍以前と比べても、労働力不足は一層深刻化します。具体的には、2030年の時点で883万人の労働力が不足すると予測されています(NRI『労働力不足解消と女性の経済的自立実現に向けて』より)。高齢化のさらなる進行と生産年齢人口の減少とが相まって、2030年前後に表面化してくる社会問題を総称したものが「2030年問題」です。

 

2054年問題との違いは、2030年の時点でも高齢者の増加が顕著であるものの、まだ通過点に過ぎないという点にあります。また、2030年になると労働力不足は大きなインパクトを持ち、従来の体制を維持できない企業が出てくることも懸念されます。さらに2030年以降は、これまで以上に深刻な労働力不足に企業が頭を悩ませることになるでしょう。

 

関連記事:2030年問題とは?労働力不足が招く企業の問題と人材活用の重要性

 

●「2054年問題」と「2040年問題」との違いとは?

 

2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口は3,921万人に達すると推測されています。団塊ジュニア世代とは、第二次ベビーブームの時期(1971〜1974年)に生まれた世代のことで、この時期の年間出生数は約200万人でした。

 

これと同時に、2025年から2040年までの15年間で、15歳から64歳までの生産年齢人口が約1,200万人減少することも推測されています。1995年のピークから2022年までの27年間における生産年齢人口の減少が1,300万人以上であることを考えると、この期間での減少スピードは特に際立っています。このように、労働力不足がますます深刻化する2040年前後に表面化する社会問題を総称して「2040年問題」といいます。

 

2054年問題との違いは、2040年問題は生産年齢人口の急激な減少を含むことです。2040年代には経済成長もマイナスに陥るといわれ、企業の労働力不足は必至です。何らかの理由で働いていないものの、就業が可能である「潜在労働力」を活かせる環境をつくるなどの対策を講じなければなりません。人手不足を解消するための抜本的な改革を打ち出さなければ、企業運営そのものが困難となるでしょう。

 

関連記事:2040年問題とは?2025年との違いをわかりやすく解説

 

■超々高齢化社会に向けてとるべき対策とは?

 

日本における高齢化と労働力不足は今後さらに進行していくことが確実であり、企業としては労働力の確保や生産性の向上に取り組むことがこれまで以上に急務です。超々高齢化社会に向けて企業がとるべき対策を以下にまとめました。

 

●健康寿命の増進

 

健康寿命とは、心身ともに健康な状態を維持しながら、就労や家事を自立しておこなえる期間を意味します。企業が労働者の健康寿命に配慮すると、年齢を重ねてもいきいきと働いてもらうことができ、労働力不足の解消につながります。

 

パソナが提供する健康経営支援サービスでは、企業の健康経営を「産業保健」「健康経営推進」「ウェルネス」「女性の健康」の4つの観点からサポートします。また、これらの観点を横断し、企業の健康管理・増進をオンラインで実現するワンストップサービスもあります。これから健康経営を推進する企業は、外部の知見を活用しながら「成果が上がる健康経営」に取り組むことをおすすめします。

 

社員は人的資本であり、会社の貴重な資産です。社員の健康づくりをサポートすることは生産性の向上をもたらすだけでなく、労働力不足解消の一助となるでしょう。

 

関連記事:健康経営度調査とは?目的と企業メリット、最新情報を解説

 

●潜在的な労働力の活用

 

潜在的に就業が可能でありながら、何らかの理由で労働に従事していなかった女性や60代・70代のシニア層を活用することは、労働力不足への対策として有効です。

 

ただし、これらの人材を活用するためには、多様な就業形態を整える必要があります。従来は出勤してのフルタイム勤務が基本でした。しかし、時短勤務や在宅ワーク、フレックスタイム、副業など、個々の事情に即して選択できるバリエーションのある働き方を導入することが求められます。

 

潜在労働力の活用に環境整備は欠かせないものの、多様な働き方が可能となれば既存社員にとっても働きやすくなり、従業員満足度やモチベーションの向上、定着率が高まる効果も期待できるでしょう。

 

関連記事:ハイブリッドワークとは?メリット・デメリットと最新企業事例を解説

 

●DXの推進による業務の効率化

 

今後、生産年齢人口の減少により、現状の社員数を前提とした企業経営を続けていくのは困難になることが予想されます。このため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業務の効率化と生産性の向上に取り組む必要があります。

 

生産年齢人口の減少が加速する以上、企業が社員数を増やし続けることには限界があります。DXにより自動化・効率化が進めば、同じ業務を少数の人員で遂行できます。DXの推進は人手不足解消に向けた有効な施策なのです。

 

関連記事:人事DXの正しい進め方とは?具体的な成功事例をもとにした導入マニュアルを公開

 

■まとめ

 

2054年問題とは、生産年齢人口が減少する一方で、75歳以上の後期高齢者の人口が2054年まで増え続けるという問題です。今後も高齢者の数が増え続けると、医療・介護関連費の増加や労働力不足といった問題がますます深刻化していきます。

 

高齢化の加速度的な進行を前に、企業としては社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援する必要があります。パソナが提供する「セーフプレースメント・トータルサービス」は、社員のキャリア自律を手助けするサービスです。ライフキャリアプラン研修や専門コンサルタントによるカウンセリングなど、多様なプログラムを通じて社員が自らのキャリアを見直し、将来に向けた選択ができるようにサポートします。

 

超々高齢化社会に向け、大切なのは社員一人ひとりが今後の社会の変化に対応し、自律的に歩む力を身につけることです。企業には、将来を見据えたキャリア開発支援に取り組み、社員の能力やスキルを継続的に開発していくことが求められます。

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