日本の少子高齢化や人口減少により、社会保障費の増大や労働力不足などが懸念される「2025年問題」が目前に迫っています。しかし、2025年はまだ序の口という表現が適切かもしれません。昨今は、さらに状況が深刻化する「2040年問題」が注目を集めています。
この記事では2040年問題とは何か? 2025年問題の違い、企業が2040年問題に備えるべきポイントについて解説します。
関連記事:2030年問題とは?労働力不足が招く企業の問題と人材活用の重要性
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「2040年問題」とは、日本の人口減少と少子高齢化が進行することにより、2040年に顕著に表面化するさまざまな社会問題の総称です。人口推計の数値をもとに、2040年にどのような問題が起こりうるか見ていきましょう。
まず、2022年11月、2025年、2040年時点の人口の推移を見ていきます。
引用元:2022年11月時点の人口は「人 口 推 計- 2022年(令和4年) 11 月 報 -」より、2025年推計・2040年推計の人口は「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果報告書」より作成
注目すべき点は、国内の生産年齢人口(15~64歳)が2040年には人口の53.9%まで下がることです。2022年より約1,400万人減少、2025年推計からは約1,200万人減少することが予測されています。これにより、2040年には深刻な労働力不足におちいる可能性があるのです。
WHOの定義では、65歳以上の人口が総人口の21%を超える社会は「超高齢化社会」となっています。日本はすでに超高齢化社会なのですが、2040年になると65歳以上の人口が35.3%、75歳以上の人口が20.2%となり、高齢者数のピークを迎え未知の領域に突入します。
では、具体的に2040年にどのような問題が起こりうるのか見ていきましょう。
まず、若者が高齢者を支える、現行の社会保障制度を続けることは厳しくなります。2040年時点の人口ピラミッドを見れば一目瞭然です。第二次ベビーブーム(1971~1974年)に生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上になる高齢期にピラミッドの最も高い山ができる形になっています。
引用元:令和2年版厚生労働白書
社会保障給付費は増額が見込まれ、2040年の総額は2018年の約1.5倍になる見通しです。内訳は年金が約1.3倍、医療が約1.7倍、介護が約2.4倍です。
引用元:今後の社会保障改革について ━ 2040年を見据えて━
※医療費の推計については単価の伸び率の仮定を2通り設定
このままでは社会保障制度が崩壊の危機に瀕すると予測されており、厚生労働省は「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置し、給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保に取り組んでいます。
2025年問題とは国民の約3割が高齢者となり、さらに第1次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた団塊世代が75歳以上の後期高齢者になることで起こる社会問題の総称です。原因は2040年問題と同じく、超高齢化社会の進行と人口減少であり、労働力不足や経済成長の鈍化、医療や介護の負担増加が懸念される点も共通しています。
しかし、大きな違いはその深刻さと社会に及ぼす影響の大きさです。
2025年は、まだ高齢者人口増加の過渡期にすぎません。65歳以上の高齢者人口と75歳以上の後期高齢者人口はその後も増加の一途をたどり、2040年にピークを迎えると予測されています。有効な対策を施さなければ、2040年には多くの問題がさらに深刻化するでしょう。
2025年問題では社会保障費の「不足」が大きな問題ですが、2040年問題では社会保障制度の持続可能性つまり「継続自体」が危ぶまれています。解決するためには社会保障費の給付と負担の見直しなどの抜本的な改革、健康寿命の延伸、医療・介護サービスの生産性向上などが必要であると言われています。
関連記事:超高齢化社会が及ぼす影響とは?2025年問題や企業が取り組むべきことを解説
2040年問題の中でも、企業に直接影響を及ぼすのは労働力不足です。深刻な人手不足に陥ると顧客のニーズに応えられなくなり、その結果、業績不振につながる可能性があります。また、少人数の従業員に過度な負担がかかり人材が疲弊・流出し、さらに人手不足になる負のスパイラルが起こりやすくなります。
対策として考えるべきは、「潜在労働力層」の活用です。
まず、結婚や出産を機に退職し育児との両立が難しくフルタイムで働けない女性層に、働きやすい環境を提供し、能力を発揮してもらうという方法があります。日本の女性は世界的に見ても教育水準が高いため、無理なく働き続けられる環境さえ用意すれば、相当な労働力になるでしょう。
また、長年培ったスキルを持つシニアも潜在的な労働力です。定年後の再雇用、中途採用、リスキリングなどの推進により、シニアに継続して能力を発揮してもらうことが大切です。婦人公論とYahoo!ニュースが2022年に40代におこなった調査では「60歳以上も働きたい」との回答が74%であり、働く側の意識も変化してきています。
参照:2000人に聞いた「何歳まで働きたいか」の実情…60歳以降も働きたい人は74%!一体いつまで働けばいいの?(婦人公論.jp)
関連記事:ミドルシニア世代の特徴とは?キャリア自律を促すポイントも解説
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女性活躍を推進されている企業様に向けて、「女性管理職の採用」を実現するための採用マニュアルを作成しました。
前半では、パソナを利用した女性転職者へのアンケート調査を元に「女性の志向性や、キャリアを築いていくために必要としている環境」について解説し、後半では「女性管理職の応募を増やすには? 」「面接で女性管理職の意向を上げるには? 」といった採用過程ごとのポイントをご紹介します。
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2040年には医療や介護の担い手の不足により、介護離職の増加が深刻化すると言われています。介護は心理的・肉体的な負荷が大きいため、介護中の従業員のパフォーマンス低下も懸念されます。
介護離職への対策は、基本的には女性活用やシニア活用と同じであり、短時間勤務やフレックス勤務、テレワークなどの多様な働き方ができる柔軟な勤務制度への変革です。
関連記事:ハイブリッドワークとは?メリット・デメリットと最新企業事例を解説
慢性的な人手不足はミスの増加、品質の低下につながり既存事業に支障をきたす可能性があります。人口減少社会で事業を継続するためには、IT技術を活用して組織やビジネスモデルを変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)の実行が欠かせません。
また、業務の自動化や適切な人員配置などによる生産性向上も大事です。近年はSaaS(クラウドサービス)の登場により領域によっては相当な業務効率化が可能です。また、ITを活用して時間や場所を柔軟に選べる働き方を導入することで、前述の女性やシニアの活用、介護離職問題への対策にもなります。
関連記事:人事DXの正しい進め方とは?具体的な成功事例をもとにした導入マニュアルを公開
労働力不足になれば企業の採用競争は激化します。そこで最近注目されているのが「EVP(従業員価値提案)」です。EVPとは「従業員に企業を選んでもらう」という視点で、自社で働く魅力を伝え企業価値を高める取り組みです。
価値や魅力とは給与・待遇面だけでなく、柔軟な働き方、裁量権の大きさ、昇格の速さ、社風、人材の魅力などさまざまです。自社は何を従業員に提供できるかという視点で取り組みを進め、積極的に発信することが定着率向上、エンゲージメント向上、採用力向上につながります。
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また、パソナでは女性の活躍支援にも創業以来取り組んでおり、女性管理職の採用支援の取り組みについてもご紹介しています。
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2040年には、日本の高齢者人口がピークに達し、労働力不足の深刻化、社会保障の崩壊の危機、介護離職者の増加などさまざまな問題が噴出すると予測されています。すでに2025年問題への対策に取り組んでいる企業も、問題がより深刻化する2040年を見据えて自社の改革をおこなう必要があるでしょう。
企業が最も懸念する人手不足への対策としては、女性やシニアなど潜在労働力の活用や介護離職を防ぐ仕組みの構築が必要です。具体的には、意欲ある誰もがワークライフバランスを保ちながら働き続けられる多様性に配慮した人事制度を構築することです。あわせて、変化の激しい時代のなかで社員の年代を問わず、継続した教育支援をおこなうことも大切です。
パソナの「セーフプレースメント・トータルサービス」では、研修や人事制度構築などによる社員の能力開発を支援するほか、約400万人のデータから開発した適性適職診断PATによる社員の特性分析を人材の適正配置に活かすこともできます。2040年問題への対策を考える際は導入を検討してみてはいかがでしょうか。
関連サービス:セーフプレースメント・トータルサービス PASONA BIZ
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高齢者雇用安定法の改正、いわゆる「70歳就業法」の施⾏に伴い、70歳までの就業機会の確保が企業の努⼒義務となる中、ミドルシニア社員のキャリア形成に対して、⼀⼈ひとりの多様な価値観を理解し、その能⼒やスキルを継続的に開発していく支援が求められています。パソナではキャリア・ライフ・マネープランに関わる伴走型の相談、⼈生100年時代を安⼼感と納得感を持って歩み続けることのできるよう、セーフプレースメント・トータルサービスでご支援いたします。
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2023年11月28日 08:30
日本は少子高齢化が急激に進み、人口減少のフェーズに入っています。近い将来、深刻な労働力不足になる可能性が非常に高いため、多様な人材が能力を最大限に発揮して活躍する社会のあり方がますます求められるようになりました。 ビジネス領域では、これまで
2023年10月31日 08:30
近年、男性育休という言葉を耳にする機会が増えています。2022年の育児・介護休業法の改正が男性の育休取得の促進を目指していたことや、メディアが男性育休を積極的に取り上げるようになったこともあり、社会の男性育休に対する注目度が高まっています。