サステナブル経営を解説!持続可能な企業経営とSDGsの関連性とは

2022年10月11日 08:30 #ウェルビーイング経営

近年、世界中の企業が積極的に取り組んでいる「サステナブル経営」。事業活動として重要なことはもちろん、株式市場や社会における企業価値の判断軸にもなっています。

 

日本でもサステナブル経営という言葉は広く浸透してきました。しかし、正確な意味や重要性、SDGsとの違いまでしっかり理解している人はまだ多くはなく、社員のさらなる理解が必要と考える担当者も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、サステナブル経営とは具体的にどのようなものなのか。その本質と、企業が推進すべき理由、推進のメリット、SDGsとの関連性などを解説します。

 

 

■サステナブル経営とは何か?

■サステナブル経営のメリット

■持続可能な企業経営とSDGsの関連性

■サステナブル経営の課題と推進ポイント

■まとめ

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■サステナブル経営とは何か?

「サステナブル(Sustainable)」とは「持続可能、続けていくことができる」という意味の単語です。「サステナブル経営」とは、企業が環境を悪化させたり、社会に悪影響を及ぼしたりせず、未来の世代が継続的に地球の資源を活用し、健全な営みをおこなえるように「環境」「社会」に配慮した経営をおこなうことを指します。

 

昨今、サステナブル経営が注目されてきた背景には、世界人口の爆発的増加、グローバルな経済活動の活発化による地球温暖化などの気候変動、エネルギー・資源の枯渇、貧困・格差の拡大など、深刻かつ複雑な数々の課題があります。

 

今の状況がさらに悪化していくと、企業活動という次元ではなく、地球上での人々の生活そのものが脅かされる可能性が指摘されています。

 

このような地球規模の課題を前に、2006年に国連がまず投資家に対して、環境、社会、ガバナンスに関する視点を投資に取り入れる「責任投資原則[1] 」を提唱しました。2015年には、国連サミット[2] でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたほか、サステナブル経営に関する国際的な枠組みが次々と制定されています。

 

もちろん強制力はありませんが、世界中の企業が業種や規模を問わず、未来の世代が得られるはずの利益を犠牲にしない、社会や環境に配慮しながら事業成長を目指すサステナブル経営の推進が求められているといえます。

 

■サステナブル経営のメリット

サステナブル経営の実践は、企業にとって制約が増えるだけという印象を持たれがちですが、戦略的にサステナブル経営に取り組むことで得られるメリットも多々あります。

 

【サステナブル経営に取り組むメリット】

○企業のブランドイメージが向上

「サステナブル経営を進める企業」として自社をアピールすることで、顧客、取引先などさまざまなステークホルダーに評価されブランドイメージが向上します。あらゆる方面で良好なブランドイメージが確立すれば、新規顧客の獲得や新商品やサービスの開発、ひいては企業規模の拡大にもつながっていくでしょう。

 

○「リスクヘッジ」で守りの対策

未来に予測される自然環境問題や社会・経済に関する課題に今すぐ取り組むことで、リスクを未然に防ぐことができます。例えば、企業活動におけるエネルギー資源の消費や温室効果ガスの排出などでは、社会的責任を意識したエコシステムの導入など、収益性を確保しながら、ビジネスの在り方そのものを変革させることがポイントです。

 

○社員の満足度やロイヤリティの向上

サステナブル経営により環境問題や社会的な課題に取り組むことで、社員一人ひとりが仕事を通して社会貢献していることを自覚し、満足度やモチベーションが高まることが期待できます。「社会貢献に積極的に取り組む企業で働いている」という自信や誇りが社員の高いパフォーマンスを引き出し、企業の長期的な繁栄と成長につながっていくでしょう。

 

○人材確保の優位性

サステナブル経営をおこなうことで、企業の必須課題ともいえる採用活動・人材確保に優位性を持つことができます。特に、環境問題を学校教育で学んできたZ世代(1990年代後半~2000年代初頭生まれの世代)はサステナブル経営を重視し、企業が倫理的であるかどうかを選択の判断基準とする傾向があります。サステナブル経営に真摯に取り組む姿勢や、地球環境・社会に対する企業のビジョンを明確に打ち出すことは、今後の採用活動、最適な人材の確保に必要不可欠となるでしょう。

 

〇資金調達がスムーズに

サステナブル経営については国際的な投資の枠組みが先行しているため、サステナブル経営を推進する企業は市場での評価が高まることが期待できます。日本でも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資に積極的[4] です。逆に、サステナブルな経営をおこなっていない企業は市場から淘汰されていく可能性があるでしょう。
 

■持続可能な企業経営とSDGsの関連性

サステナブル経営と同じような意味で使用されることが多い「SDGs(Sustainable Development Goals)」。SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことです。

 

SDGsはサステナブル経営という大きな概念を細分化して、企業が取り組むべき目標、取り組み事項にしたものと理解すればよいでしょう。2030年までに「豊かな発展を追求しながら誰一人取り残さない持続可能な社会」の達成を目指し、具体的な17の目標が掲げられています。

 

SDGsは環境の保護のみならず、人々の働きがいや経済成長なども統合した持続可能な社会の実現を示していることがポイントです。企業が戦略的にSDGsの目標を設定し、課題解決に向けて事業をおこなうことで、イノベーションが生まれ、企業価値が向上することも期待されています。

 

【SDGs の17の目標】

1.貧困をなくそう

2.飢餓をゼロ

3.すべての人に健康と福祉を

4.質の高い教育をみんなに

5.ジェンダー平等を実現しよう

6.安全な水とトイレを世界中に

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに

8.働きがいも経済成長も

9.産業と技術革新の基盤をつくろう

10.人や国の不平等をなくそう

11.住み続けられるまちづくりを

12.つくる責任 つかう責任

13.気候変動に具体的な対策を

14.海の豊かさを守ろう

15.陸の豊かさも守ろう

16.平和と公正をすべての人に

17.パートナーシップで目標を達成しよう
 

■サステナブル経営の課題と推進ポイント

サステナブル経営を推進するためには、まず自社の現状を把握し「どのような社会をつくりたいのか」「そのために自社は何を優先的に取り組むべきか」などのビジョンを明確にすることがポイントです。 サステナブル経営は広範な概念であり、業界・企業によって関係性の深い領域も異なるからです。

 

まずは社員を集めて議論を交わし広く意見を募り、組織を巻き込んだ現実的な目標設定をおこない、施策とアクションプランを作っていきましょう。推進する担当部門については、経営企画[5] 部、財務、総務、広報部門などの選択肢があります。あるいは海外企業のように、サステナビリティ専門部署を創設してもよいでしょう。

 

また、策定したビジョンやアクションプランは社内外に周知し、サステナブル経営の重要性と具体的な取り組みの進捗を、多くのステークホルダーに公開・発信し続けましょう。継続して取り組むプロセスを可視化することが、社内外からの高評価につながります。

 

何より、サステナブル経営の理解度が浅いと経営層も現場の社員も「なかなかプラスの効果が見えない」と短期的に判断したり、リターンをすぐに追求したりしがちです。取り組むこと自体に価値があること、取り組まなければマイナス面が生じること、取り組むメリットがあることを理解してもらう必要があります。

 

■まとめ

サステナブル経営とは、企業が利益のみを追求するのではなく「環境」「社会」「企業統治(ガバナンス)」の観点に配慮しながら社会課題を解決し、事業成長していくことを目指す経営です。

 

今後は、中小企業であっても取引先からサステナブルな経営をしているか確認されるケースが増えていくでしょう。すでにサステナブルな経営は投資家の重要な基準になっています。SDGs世代とも呼ばれるZ世代[6] は、就職先選びにサステナブルな経営をしているかを重視します。さまざまな領域でサステナブルな経営をしているかどうかが問われ始めているのです。

 

大きな世界の潮流の変化ではありますが、サステナブル経営の哲学は、もともと日本企業が持っていた「三方よし」などの経営哲学に近いといえます。このパラダイムシフトに乗じて今一度自社の強みを見直し、社会や自然環境、すべてのステークホルダーに配慮したサステナブル経営に取り組み、事業成長を目指してはいかがでしょうか 

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