2023年04月04日 08:00 #人事トレンド #ウェルビーイング経営
人材の定着や業績の向上を考える際に忘れてはならないのが、自社が社員にとって「働きがい」のある会社かどうかという点です。社員が働きがいを感じることで、会社に対する愛着や本人のモチベーションが高まると考えられており、人材不足への対応や生産性向上の必要性が増すこれからの企業経営を考えるうえで重要なポイントとなっています。
この記事では、働きがいとはどのようなものなのか、その意味や職場づくりの方法、企業の取り組み事例をご紹介します。
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働きがいとは「働くことに感じるやりがい」を意味する言葉で、自分の仕事に対して感じる価値や誇り、積極的に取り組もうとする意欲などを指します。働きがいの研究プロジェクトをおこなう国際経済労働研究所は、社会心理学の観点から「働きがい」を「ワークモチベーション(仕事に対する動機づけ)」と定義し、労働そのものの楽しさや興味が働きがいを高めるとしています。
また、世界約100か国で働きがい認定企業の発表をおこなう「Great Place to Work®」では、働きがいのある会社とは「やりがい」と「働きやすさ」の両方を兼ね備えた企業であるとしています。これは心理学者のフレデリック・ハーズバーグが説いた「二要因理論」に基づく考え方で「やりがい」は職務満足に関わる動機付け要因、「働きやすさ」は職務不満足に関わる衛生要因にあたります。
出典:Great Place to Work® Institute Japan|「働きがい」とは
衛生要因には短期間の効果しかないといわれており、働きやすい環境を提供するだけでは社員のモチベーションを維持し続けることはできません。一方、動機付け要因があればあるほどモチベーションにつながり、長期的な効果が見込まれます。そのため、企業が社員の働きがいを高め、業績を向上させていくうえでは、動機付け要因である「やりがい」が重要なポイントになると考えられます。
関連記事:ワークエンゲージメントとは?意味、測定方法、高める方法を解説
働きがいを感じられる職場づくりには、職場満足に関わる「動機付け要因」と、職場不満足に関わる「衛生要因」の両面から取り組む必要があります。
まずは社員の動機付け要因を満たし、やりがいを感じられる職場づくりにつなげる方法をご紹介します。
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資料ダウンロード | 社会人2年目の実態調査 社会人2年目の実態調査2023 -若手社員は何を求めて働いているのか-
本調査では、社会人2年目(2022年入社)の彼らに新入社員研修を振り返ってもらい、彼らは新入社員研修をどのように捉えていたか、実務で役立った研修や受講の有無に関わらず不足していると感じている知識やスキルは何か、彼らが仕事をする上で重視していること、テレワーク導入・未導入、男女での違いなど若者の本音が見えてくる調査結果となりました。
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仕事を通じて自身の成長や周囲からの承認を感じることは、社員の自己実現欲求や承認欲求を満たし、働きがいにつながります。資格取得支援や社内検定、社内表彰やサンクスカードなどの導入により、仕事を通じて成長していることや周囲から認められていることを社員が感じられる機会を提供するとよいでしょう。
目標設定において、現実に即していない高い目標やノルマのような強制的な目標は、かえって社員のやる気を削いでしまいます。仕事にやりがいを感じてもらうには、社員にとって公平感や納得感のある目標設定が重要です。適切な目標設定ができれば、モチベーションの向上や仕事の達成感を得られ、働きがいが高まります。
社員が主体的に仕事に取り組む姿勢を育てるには、どのような仕事に興味があるのか気づく機会や、興味を持った仕事を体験する機会をつくる必要があります。具体的には、1on1ミーティングにおける対話、社内公募制度や社内インターン制度による仕事体験の場などを提供するとよいでしょう。仕事に興味を持つ機会をつくることで、社員にとって働きがいのある仕事とはどのようなものかを明確にすることができます。
関連記事:1on1ミーティングの目的とは?メリットや実施ポイントを紹介
働きがいを高めるには、社員の経験や意欲を見て、適切なタイミングで昇進やエンパワーメント(権限移譲)を実施することも大切です。裁量が広がる分、本人にプレッシャーはかかるものの、周囲からの承認や期待も感じられるため、スキルアップとともにモチベーションの向上にもつながるでしょう。
働きがいのある職場をつくるためには、会社の方針や作業環境、対人関係、給与といった「衛生要因」を満たし、社員の不満につながる要素を取り除くことも大切です。
社員が働きやすさを感じられる職場づくりの方法には以下が挙げられます。
企業の方向性や経営者の思いを示す「経営理念」、社会における存在意義を表す「パーパス」は、社員の誇りやモチベーションに深く関わるものです。自社の経営理念やビジョン、パーパスが共感できるものではない場合、社員の不満やモチベーション低下につながるため、内容や周知方法の見直しをおこなう必要があります。
また、上司の管理や指導が個人的な価値観によるものではなく、企業の方針として示している経営理念やパーパスに沿ったものであることも重要です。
関連記事:パーパス経営とは?企業理念との違い、注目される理由を解説
人事評価や給与などの待遇が業務内容と実績に見合ったものであること、残業や休日出勤を前提としない適切な業務量が割り振られていることは、社員が職場に不満を抱かないための最低条件となります。ただし、不満があっても表立って言いにくい内容であるため、社員がどう感じているのか率直な意見を聞きたいときは、匿名のアンケートを実施するなどして現状把握からおこなうとよいでしょう。
職場の人間関係は、社員が心地よく働けるか、また円滑に仕事を進められるかという点に大きく関わります。企業としては、社員同士が相互理解を深め、意見の発信や情報共有をしやすい職場となるようにサポートする必要があります。具体的には、ランチ会や懇親会、1on1ミーティングなどを実施し、職場内におけるコミュニケーションの活性化を図っていくとよいでしょう。
関連記事:コミュニケーションコストとは?高い組織の特徴と問題点、削減方法を解説
感染症流行下のテレワーク普及などを経て柔軟な働き方を求める人が増えていること、また社員が身体的・精神的・社会的に満たされる環境をつくる「ウェルビーイング経営」が広まっていることから、従来の働き方にこだわる企業では社員の不満が高まり、人材流出につながる傾向があります。企業には、社員がライフステージの変化や希望に合わせて柔軟な働き方ができるよう、短時間勤務や在宅勤務、フレックス勤務などが可能な勤務制度をつくることが求められます。
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働きがいのある職場をつくるには、社員が「やりがい」と「働きやすさ」の両方を感じられるような多角的な取り組みが必要です。ここでは、実際に企業が取り組んだ働きがいを感じられる職場づくりの事例をご紹介します。
PDFやデザインツールなどで知られるアドビ(Adobe)株式会社の日本法人では、日本版ビジョンに「心、おどる、デジタル」を掲げています。これは「日本市場に合った独自の方向性を言葉にし、会社で共有できるようにしてほしい」という社員からの要望を受けて策定したものです。社員の意見をビジョンに反映したことで、社員自身が「自分たちのもの」と感じられるビジョンになり、事業部を超えた横や斜めのつながりを生むことに成功しています。
人事制度においては、内容や頻度をマネージャーとメンバー間で柔軟に設定できる「Check-in」で、組織から期待されていることや今後、目指したいポジションについての対話を実施しました。給与の裁量権をマネージャーに与えることで、マネージャーは納得感のある評価をおこなうために部下とのコミュニケーションに積極的に取り組むようになり、双方の働きがいの向上につながっています。
参考:Great Place to Work® Institute Japan|アドビ株式会社
医科学分野の研究支援事業や介護ヘルスケア事業をおこなう株式会社ミクセルでは、代表を務める島 幸司氏の「会社員時代に不満を感じていた要素を排除する」という考えに基づき、働きがいのある職場づくりを実践しています。
その具体例として、責任は負うけれど権限はもらえないという矛盾を解消するために、社員への権限移譲を推進しました。一つの達成目標に複数の成果が付随する形で目標を管理する「OKR」(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)をチームごとに設定し、達成までのプロセスを現場に任せることで、自律型の組織づくりを進めています。
参考:Great Place to Work® Institute Japan|株式会社ミクセル
働きがいとは、自分の仕事に対して価値や誇りを感じ、積極的に取り組もうとする意欲を指す言葉です。社員が成長や承認、仕事への興味を感じられる機会を設ける、共感できる企業理念やパーパスを掲げるなど「やりがい」と「働きやすさ」の両方を兼ね備えた職場をつくることで、社員の働きがいを高められます。
自社に適した働きがい向上の取り組みを考える際は、はじめに現状を調査・把握し、課題の可視化や分析をおこなうことが重要です。
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働きがいを感じられる職場づくりを始める際は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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