早期退職制度のメリットとデメリットを企業視点で解説!運用の手順や注意点も紹介

2023年09月19日 08:30 #セカンドキャリア支援

現在はVUCA時代ともいわれ、先行きが不透明で予測困難な状態にあります。従来の常識が通用しない時代になりつつあるなか、より高い競争力を身につけるために組織再編を志向する企業が増えています。そして、組織再編の一環として「早期退職制度」を取り入れる動きも見られます。

 

しかし、早期退職制度はネガティブなイメージも根強く、制度の導入をためらう企業は少なくありません。企業視点で考えたときに、早期退職制度の運用によってどのようなメリットを享受できるのでしょうか。

 

この記事では、企業から見た早期退職制度のメリット・デメリットとともに、制度実施の具体的な手順や運用開始後の注意点について解説します。

 

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■早期退職制度とは?

■希望退職制度との違い

■早期退職制度のメリット

■早期退職制度のデメリット

■早期退職制度を実施する場合の手順

■早期退職制度の運用を開始した後の注意点

■まとめ

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■早期退職制度とは?

早期退職制度とは、定年退職前に従業員が自主的に退職することができる制度をいいます。

 

早期退職は従業員からの申し出と企業側の承諾によって成立するもので、従業員の「自己都合退職」となるのが原則です。この場合、失業手当を受給する際には7日間の待機期間の後に、最長で3か月間の給付制限があります。自己都合による退職では失業手当を受け取るまでに一定の期間を要することに注意が必要です。

 

なお、現在の定年年齢は65歳が一般的ですが、今後は70歳に引き上げられる見込みです。2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられ、さらに70歳までの就業確保が努力義務となりました。こうした動きに伴い、早期退職制度の対象は今後さらに拡大していくことが予想されます。

 

 

■希望退職制度との違い

 

早期退職制度と類似する制度に「希望退職制度」があります。両者の相違点として、早期退職制度が恒常的な制度であるのに対し、希望退職制度は一時的な制度であることが挙げられます。

 

希望退職制度は、主に事業縮小や組織再編に伴う人員整理のため、期間を限定して実施されるものです。退職を希望する従業員を募る制度であり、企業側が一方的に退職を強いることはできません。

 

また、希望退職制度は企業側の方針で実施されるため、退職者は「会社都合退職」として扱われます。これにより、失業手当は7日間の待機期間の後にすぐに給付されます。自己都合退職となる早期退職制度とはこの点でも違います。

 

■早期退職制度のメリット

 

企業側から見た早期退職制度のメリットには以下が挙げられます。

 

●メリット①:人件費の削減

 

早期退職制度の導入により、早期退職した従業員の人件費を削減できます。人件費は企業にとって最も大きな経費負担の一つであり、早期退職者を募ることで人件費の最適化につなげられます。

 

2020年代にはバブル期に大量採用された世代が50代となり、勤続年数の長い従業員ほど給与額も高くなりがちです。このような年功序列型の給与体系を維持すると人件費の負担は膨大なものとなるため、制度によって早期退職者を募集することは人件費削減に向けた有力な施策になると考えられます。

 

●メリット②:人員調整の実現

 

組織運営上、現状よりも従業員数を抑制する施策が必要になることもあるでしょう。このときに整理解雇を実施すると、会社からの一方的な動きとなり、従業員とのトラブルに発展するおそれがあります。この点、早期退職の希望者を募れば、双方の合意のもとで人員調整を実現できます。従業員自身が自らの意思で申し出ているため、退職に関してトラブルになりにくいというメリットがあります。

 

●メリット③:組織の活性化

 

早期退職制度は、組織の活性化にも大きく寄与します。高齢の社員が在籍し続けると、若手社員の活躍の場が減ってしまい、キャリア形成に支障をきたすことも否めません。そこで、早期退職者を募ってポジションや役職に空きをつくり、若手社員に重要なポジションを任せれば、組織全体の若返りを図ることができます。

 

■早期退職制度のデメリット

 

企業は早期退職制度の実施によりさまざまなメリットを享受できる一方で、以下のようなデメリットが生じることも認識しておく必要があります。

 

●デメリット①:早期退職に伴うコストの増大

 

早期退職制度は何らかの優遇措置と引き換えに退職者を募るものであり、企業は早期退職者に対して割増退職金を支給したり、再就職を支援したりするのが一般的です。制度を導入すると、このような退職者へのサポートが必要となるため、一時的にコストが増大してしまいます。特に早期退職の希望者が複数いる場合には、想定以上にコストがかさんでくる可能性もあります。

 

●デメリット②:人材流出のリスク

 

すべての従業員を対象に早期退職希望者を募った場合、有能な人材が同業他社へ流出してしまうリスクが生じます。さらに、早期退職によって経験豊富なベテラン社員が退職すると、業務の生産性が著しく低下するおそれもあります。加えて、その業務が属人化していた場合には、人材が持つノウハウまで流出してしまうことになります。後任者に引き継ぎをおこなったとしても、同程度のパフォーマンスをすぐに発揮するのは難しいでしょう。

 

■早期退職制度を実施する場合の手順

 

企業が早期退職制度を実施する際の具体的な手順を以下にまとめました。

 

●手順①:制度目的と具体的な内容の確定

 

まずは早期退職制度を導入する目的を明確化し、そのうえで目的に適合する対象者や実施時期、規模、条件などを具体的に設定します。

 

たとえば「組織内の世代交代を進める」という目的であれば、対象者を55歳以上に絞るなど年齢で明確に区切る必要があるでしょう。また「ミドルシニア社員の自律的なキャリア形成の支援」という目的であれば、対象者は40代および50代と幅広く設定し、キャリアカウンセリングや再就職支援などのサポートを手厚くする案が考えられます。

 

制度導入の目的が不明確であると、安易な人員整理とも誤解されかねません。これを防ぐためにも、あらかじめ目的を明確にしておくことが重要です。

 

●手順②:従業員代表や労働組合との協議

 

早期退職制度の概要が確定した後には、従業員代表や労働組合との協議をおこないます。 早期退職制度が企業側の一方的な押し付けであってはならず、導入にあたっては従業員目線の意見を聴取する必要があります。内容によっては制度に反映させ、従業員の納得感を得ることが重要です。

 

●手順③:取締役会での決定

 

会社法によると「重要な業務執行」をおこなうためには取締役会の決議が必要です。この点、早期退職制度は「重要な業務執行」に該当する可能性があり、制度を開始するには取締役会の決議を経なければなりません。制度の概要を示し、役員からの同意を得る必要があります。

 

●手順④:従業員全体に対する周知

 

制度の運用を開始する前に、従業員全体に周知をおこない、早期退職者の募集基準を明示します。このとき、リーフレットやメールで通知することもできますが、従業員に直接説明する機会を設けるのが望ましいでしょう。早期退職制度の導入は従業員にとっても重大事であるため、説明会を開催して丁寧に説明するべきでしょう。

 

●手順⑤:制度運用の開始

 

早期退職制度の運用を開始した後には、当初は予期していなかった問題が起きることも考えられます。たとえば、想定以上の応募者が集まってしまったり、反対に応募者が一人も集まらなかったりといったケースです。この場合は、募集対象者の変更や退職条件の修正を実施するなど、制度開始後も柔軟な運用をおこなうことが大切です。

 

■早期退職制度の運用を開始した後の注意点

 

早期退職制度の運用を開始した後には以下の点に注意する必要があります。

 

●ポイント①: 退職希望者に対する説明機会を確保する

 

従業員が自主的に申し出るとはいえ、早期退職制度は「退職」というセンシティブな事柄であるために、企業側と従業員側の細かな見解の相違からトラブルに発展するおそれがあります。企業としては、細心の注意を払って手続きを進めていかなければなりません。

 

具体的には、退職金の算出方法や再就職のサポート、有給休暇の消化状況などを細かく確認します。退職希望者と面談する際にはこれらの内容を丁寧に説明し、相互理解を深めることで、両者にとって円満な早期退職を実現できるでしょう。

 

●ポイント②:早期退職制度への応募は自由意志に委ねる

 

早期退職は従業員の任意であることが前提であり、企業側からの強制があってはなりません。万一、退職を強要するような言動があれば、会社に対する不信感が社内全体に広がってしまいます。従業員に不信感が生じると、制度の継続は難しくなるでしょう。

 

早期退職制度は条件に該当する従業員を広く募るものであり、この点で特定の従業員を対象とする退職勧奨とは異なります。早期退職制度への応募はあくまで従業員の自由意志に委ねなければならない点に注意が必要です。

 

 

■まとめ

 

早期退職制度は退職勧奨や整理解雇に近似した制度と捉えられることも多く、ネガティブなイメージを持たれがちです。しかし、実際には企業にとって組織の活性化や人件費の抑制といった利点があり、従業員にとっても早い時期から自身のキャリアやワークライフバランスを再設計できるメリットがあります。人事担当者は早期退職制度の活用を人事施策上の選択肢として考えるとともに、将来的な制度の活用に備えて早期退職制度のメリットとデメリットへの理解を深めておくべきでしょう。

 

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