【女性活躍推進法】プラチナえるぼしの認定基準と行動計画の立て方

2020年6月に創設された、厚生労働省の新たな認定制度「プラチナえるぼし」は、2016年4月に全面施行された女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定よりも、さらに水準が高い特例認定制度です。

 

近年は、自社ブランドのイメージアップや従業員満足度の向上、人材確保の観点などからも、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を目指す企業が増えており、2022年6月末時点でのえるぼし認定企業は、すでに1,789社にも上ります。一方、プラチナえるぼしの認定企業は26社とまだ希少です。

 

本記事では、経営戦略の一環としても注目されつつある、プラチナえるぼし認定について、認定基準や行動計画、認定企業の事例を紹介します。また、あわせてパソナ及びパソナグループが実践した、えるぼし認定への具体的な取り組みもご紹介します。

 

関連記事:女性活躍推進で企業や社員はどう変わるのか?成功例と具体的な課題解決方法について解説

 

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■えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは?

■プラチナえるぼしの認定基準

■女性活躍推進法に基づく行動計画の立て方

■えるぼし認定・プラチナえるぼし認定への取り組み事例

■まとめ

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■えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは?

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づいた「女性の活躍に関する取り組み状況が優良な企業」を認定する制度です。

 

●女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法とは、2016年4月に施行された「女性が活躍しやすい職場環境づくりを目指す」法律です。国内の少子高齢化による労働人口減少が進むなか、働きたい女性がその能力を十分に発揮できる社会の実現を目指し、女性の労働参加・活躍を後押しするために制定されました。

 

制定時は、常時雇用している労働者が301人以上の事業主に女性活躍推進に関する「一般事業主行動計画(行動計画)」の策定・公表が義務付けられていましたが、2022年4月に改正され、現在は労働者が101人以上300人以下の事業主にも義務化されています。

 

関連記事:男女賃金格差の開示義務とは?女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと

 

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●えるぼし認定とは?

えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づいた一般事業主行動計画の策定・届け出をおこなった企業のうち、その取り組み状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。

 

厚生労働省が定めている、えるぼし認定の基準は「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つです。これらの基準を満たしている評価数によって、以下のように3段階の認定が決定され、認定企業に「えるぼし認定マーク」が発行されます。

 

● えるぼし1段階目は、5つの認定基準のうち1つまたは2つ

● えるぼし2段階目は、5つの認定基準のうち3つまたは4つ

● えるぼし3段階目は、5つの認定基準すべて満たし、かつ「女性の活躍推進企業データベース」に毎年、その実績を公表している企業

 

●プラチナえるぼし認定とは?

プラチナえるぼし認定とは、えるぼし認定企業の中で女性活躍推進法に基づいた一般事業主行動計画の取り組み状況が、特に優良な一定の要件を満たした場合に認定される制度です。

 

プラチナえるぼし認定は、プラチナえるぼし認定の認定基準を満たすだけでなく、えるぼし認定と同項目で、より高い基準も求められます。プラチナえるぼし認定を取得した企業には、プラチナえるぼし認定マークが与えられます。

 

【えるぼし認定・プラチナえるぼし認定マーク】

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定マーク

出典:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定

 

それぞれの認定マークは商品などに付与することができるため、マークを活用することで対外的に女性活躍に積極的な企業というイメージを発信できます。さらに、公共調達の際に加点評価されるメリットがあります。

●えるぼしとプラチナえるぼしの違い

     

プラチナえるぼし認定は、えるぼし認定よりも女性活躍について高い水準が求められ、例えば女性管理職比率について、えるぼし認定は「産業ごとの平均以上」ですが、プラチナえるぼし認定は「産業ごとの平均値の1.5倍以上(他に細かい基準あり)」である必要があります。

 

男女の継続就業年数の差なども平等に近い数値が基準とされている厳しい認定制度ですが、プラチナえるぼし認定企業は2022年6月時点で26社とかなり希少なため、取得による企業イメージの向上はえるぼし認定より大きくなるでしょう。

 

■プラチナえるぼしの認定基準

 

プラチナえるぼしの具体的な認定基準は以下のとおりです。表にある「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5項目の認定基準を、すべてを満たしている必要があります。

 

【プラチナえるぼし認定基準】

採用
①男女別の採用競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度であること。(直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率×0.8」 が、直近3事業年度の平均した「採用における男性の競争倍率」よりも雇用管理区分ごとに低い)。

または

② 直近の事業年度で、次の(i)(ii)の両方に該当すること。

(i) 正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること。

(ii) 正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること。

(※)正社員に雇用管理区分を設定していない場合は(i)のみで可。

 

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継続就業
①直近の事業年度で、次の(i)(ii)どちらかに該当すること。

(i) 「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。

(※)期間の定めのない労働契約を締結している労働者に限る。

(ii)「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ9割以上であること。

(※)継続雇用割合は、10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者(新規学卒者などに限る)のうち、継続して雇用されている者の割合。

② 上記を算出することができない場合は、以下でも可。

・直近の事業年度で、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であること。
労働時間等の働き方
雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働および法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとにすべて45時間未満であること。


管理職比率
〇直近の事業年度で、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍以上であること。

ただし、1.5倍後の数字が、

①15%以下の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が15%以上であること。

(※)「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合」が「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」以上である場合は、産業計の平均値以上で可。

②40%以上の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が正社員に占める女性比率の8割以上であること。

(※)正社員に占める女性比率の8割が40%以下の場合は、40%以上。

 

多様なキャリアコース
直近の3事業年度に、大企業については2項目以上(非正社員がいる場合は必ずAを含むこと)、中小企業については1項目以上の実績を有すること。
A 女性の非正社員から正社員への転換。
B女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換。
C 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用。
D おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用。

 

関連記事:女性管理職が少ない理由とは?企業の増やす取り組みとメリットを解説

 

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■女性活躍推進法に基づく行動計画の立て方

 

えるぼし認定のためには、まず女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の作成が必要です。自社の女性活躍の状況や課題を踏まえて、以下の項目について計画を立てる必要があります。


行動計画に決まったフォーマットはありませんが「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」を盛り込むことが必須となります。作成にあたっては厚生労働省(女性活躍推進法ホームページ)が提供している「行動計画策定支援ツール」などを活用するとスムーズでしょう。

 

【女性活躍推進法に基づく行動計画の立て方】

計画期間
各事業主の実情に合わせ、2年~5年間に区切って定期的に行動計画について進捗を検証しながら、改定を行う。


数値目標
目標は1つ以上数値で定める必要がある。自社の状況把握、課題分析の結果を踏まえ、最も大きな改善すべき課題と考えられるものから優先的に、できるだけ複数の数値目標を各事業主の実情に合った水準で設定する。


取り組み内容
数値目標を設定したものから優先的に、目標の達成に向けてどのような取り組みを行うべきか検討する。


取り組みの実施時期
自社の状況・実情に合わせて優先的な目標から実施時期・期間を検討する。

 

参考:女性活躍推進法に基づく 一般事業主行動計画を 策定しましょう!

 

関連記事:ポジティブ・アクションとは?メリットや具体例をわかりやすく解説

 

■えるぼし認定・プラチナえるぼし認定への取り組み事例

 

ここでは、プラチナえるぼし認定を取得した2社の取り組みの事例と、パソナ及びパソナグループのえるぼし認定への取り組み内容をご紹介します。

 

●三井住友トラスト・ビジネスサービス株式会社

 

三井住友トラスト・ビジネスサービス株式会社は、2012年の会社の合併を機にプロパーの女性管理職の育成を開始しました。女性が仕事と家庭を両立できるように環境を整備した結果、2016年にえるぼし2段階目、2021年に3段階目を取得し、同年にプラチナえるぼし認定も取得しています。

 

【具体的な取り組み】

●年齢制限のない有期雇用社員から正社員への転換制度を導入

●19パターンの短時間勤務制度を設ける

●育児休業からの復職者を対象に、毎年4月に研修を実施(短時間勤務経験者による情報交換会もあわせて実施)

●結婚や介護による本人都合の勤務地域変更の申し出を可能にする など

 

【成果】

取り組み以前は、管理職のほとんどが男性かつグループ企業からの出向社員でしたが、2021年9月末には、課長職以上の女性の割合が62%に達しました。また、係長職以上の22名が短時間勤務制度を利用するなど多様な働き方が実現しています。

 

●ちばぎん証券株式会社 

 

ちばぎん証券株式会社では、2016年の女性活躍推進法の施行をきっかけに、千葉銀行グループと一体になって女性活躍推進の取り組みを開始しました。2021年8月に、千葉県内で初めてプラチナえるぼし認定を取得しています。

 

【具体的な取り組み】

●社内研修に加え、外部セミナーに指定した女性社員を派遣

●ロールモデルになる社員と話をする意見交換会を開催(コロナ禍は休止)

●全社員と人事部の個人面談とは別に、対象女性社員と個人面談を実施し、率直に悩み困りごとを相談してもらう など

 

【成果】

第1期の女性管理職比率15%以上、第2期の20%以上という目標をいずれも達成しました。また、2021年時点で新卒採用者の定着率が2016年度より17ポイントアップ。採用活動においては大学から学内セミナーの声がかかるなど、社内・社外の両方でプラチナえるぼしのよい影響が見られました。

 

●株式会社パソナ・株式会社パソナグループ

株式会社パソナおよびパソナグループは、2017年にえるぼしの最上位、3段階に認定されました。

 

多様な取り組みの結果、2017年5月末時点で、女性管理職比率が49%、女性役員比率が26%、女性社員出産後の復職比率は100%を実現しています。主な取り組みの具体的な内容は以下のとおりです。

 

【パソナの女性活躍に関する主な取り組み事例】

 

ライフサポートコース
子どもが小学3年生まで、最大で2時間30分まで勤務時間を短縮できる「タイムサポートコース」や、働く地域を限定する「エリアサポートコース」、育児や介護のサポートを受けられる「ファミリーケアサポートコース」を設置。


パソナファミリー保育園
グループ各社の社員と派遣登録社員が利用できる事業所内保育所を設立し「英語レッスン」「リトミック教育」「算数・国語のプレ教室」など、質の高い教育を実施。


ワンダーウーマン研修
パソナの未来を描き、組織を牽引できる「女性トップリーダー人財」の育成を目指し、実践型プログラムを提供。


ワーク ライフ ファシリテーター
すべての社員がソーシャル・ワーク・ライフ・バランスを実践できるように、専門資格を持つ「ワーク ライフ ファシリテーター」が仕事、健康、育児などのさまざまな相談に対応。

 

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資料ダウンロード | 健康経営銘柄・7年連続 ホワイト500! 『パソナグループの健康経営 取り組み紹介』

パソナグループは、2022年度の健康経営度調査において、健康経営銘柄に認定、健康経営優良法人のホワイト500を7年連続での取得となりました。
来年度の健康経営度調査において、優良法人やホワイト・ブライト500の認定をめざす企業様のご参考までにパソナグループの取り組みを紹介します。

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■まとめ

 

2020年6月に創設されたプラチナえるぼし認定は、えるぼし認定を受けている企業のうち、女性活躍推進に関する一般事業主行動計画の実施状況が特に優良で水準が高い場合に認定される制度です。

 

2022年6月末時点でのプラチナえるぼし認定取得企業は26社。厳しい認定制度ですが、取得できた場合、市場や採用マーケットでのイメージが大きく向上することが期待できるでしょう。

 

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を受けるためには、まず、女性活躍推進法に基づく行動計画を作成し「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」を盛り込むことが求められます。

 

厚生労働省が「行動計画策定支援ツール」を提供しているので、ツールや認定を取得した他社事例を参考に、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を目指してみてはいかがでしょうか。

 

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資料ダウンロード |「働く女性の健康推進に取り組むべき理由」

経済産業省の調査では、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」、 約4割が女性特有の健康課題などにより「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」と回答しています。 女性活躍推進法が施行され、女性の活躍が推進される中、女性特有の健康問題への対応が必要となっています。 本資料では女性の健康推進への取り組みの必要性、効果をご紹介します。

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