パーパス経営とは?企業理念との違い、注目される理由を解説

ビジネス環境が変化する中で、いま多くの企業の注目を集める「パーパス経営」。パーパスとは企業の「存在意義」を意味し、パーパスを軸とした経営のあり方が求められています。本記事では、パーパス経営に注目される背景と理由を紹介しながら、企業理念との違いも解説します。

 

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■パーパスとは?

■パーパスが注目されている背景

■パーパス経営と企業理念の違い

■パーパス経営をおこなうためのポイント

■まとめ

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■パーパスとは?

 

パーパス(Purpose)とは「目的」や「意志」を表す単語で、ビジネス上では社会における「存在意義」を意味します。パーパス経営とは、企業が何のために存在し、どのような価値創造を社会で実現するのか、ビジネス活動をおこなう上で根本となる「志」や「信念」を指針として実践する企業経営のことです。

 

近年はマネジメント用語としても注目されている概念であり、いかにパーパス重視の経営をおこない社会に貢献していくかが、ビジネス成功の鍵を握るともいわれています。パソナを含めたさまざまな企業が事業運営や経営判断の基軸として、また未来の経営モデルとして、パーパス経営への取り組みを進めています。

 

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■パーパスが注目されている背景

 

パーパスが注目され始めたきっかけは、2019年にアメリカのトップ企業が名を連ねる財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が「株主資本主義」を批判し「ステークホルダー資本主義」や「自社利益の最大化のみならずパーパスの実現も目指すべき」という姿勢を表明したことです。パーパスの概念が拡大した背景にはさまざまな要因があるといわれ、主に以下の3点が挙げられます。

 

●社会的意義を重視する価値観

 

資本主義社会における先進諸国の企業では、これまで利益を創出することを企業活動の中心としてきました。しかし、企業が利益のみを追求したことで大量生産・大量販売のビジネスモデルが出来上がり、環境問題や富の偏差といったさまざまな課題が噴出してしまったのです。このような状況下で重要視されるようになったのが、環境への配慮や社会的意義を重視するサステナビリティ(持続可能性)の価値観であり、これらの問題の解決策を企業戦略に組み込むことの必要性が高まりました。

 

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●VUCA時代に適応するためのイノベーション創出

 

先行きが不透明な「VUCA時代」(※1)において、企業が競争力を高めてビジネスを発展させていくには、さまざまなステークホルダーとコミュニケーションをとり続け、理解・共感を得る必要があります。あらゆる社会情勢・環境に迅速に適応できる構造改革や事業のイノベーション創出を柱とし、社会から信頼され続ける企業となるためのパーパス経営に注目が集まりました。

 

(※1)VUCA…「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字からなる造語。環境の変化により、社会やビジネスにおいて予測が困難な状態を意味する。

 

●日本特有の雇用制度の崩壊

 

これまでの日本のビジネスモデルは、新卒一括採用や終身雇用を中心とした年功序列型の賃金制度が維持されてきました。しかし、グローバル化やIT革命により企業を取り巻く環境が変化してきたことで、従来の縦割り組織的な流動性のない人事制度、いわゆる「日本型人材マネジメント」から脱却し、経営戦略の方向性もパーパスを起点に定めた組織づくりに転換する必要性が生じています。これからは人材投資や人事制度を経営戦略と連動させること、また社員一人ひとりとベクトルを合わせ、持続的な企業価値の向上を目指すことが求められます。

 

 

■パーパス経営と企業理念の違い

 

パーパスとよく比較されるのが「企業理念」や「経営理念」といった価値観です。

 

企業理念・経営理念とは、パーパス経営が注目される以前から存在した一般的な「MVV(Mission:ミッション/Vision:ビジョン/Value:バリュー)」の体系で、組織として最も大切にしている経営者の思いや考え方のことです。

 

 

MVVが「企業」を主体としている一方で、パーパス経営は「社会」を主体とする考え方や価値観を持っています。

 

両者は近い概念ではあるものの、MVVは外発的、パーパスは内発的な概念となっていることがポイントです。

 

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■パーパス経営をおこなうためのポイント

 

パーパス経営に必要な視点は「社会貢献と利益の両立」です。企業のパーパスは利益を達成するための活力となることを踏まえ「社会課題の解決により顧客から信頼を獲得し企業価値を向上させる」という経営戦略をいかに実践していくか、事業継続性を強化しながら、長期的な視点で利益に結びつくパーパスを検討することがポイントです。

 

最初は小規模な取り組みであっても、着実に実績を積み上げていくことで社員一人ひとりが社会に役立っていることを認識し、組織全体にパーパス経営が浸透していきます。その過程では、掲げたパーパスと実際の活動が伴わない「パーパス・ウォッシュ」の状態とならよう、自社のパーパスを明確にして社会貢献に真摯に取り組むことが大切です。

 

パーパス経営を実践し、すべてのステークホルダーから応援される存在となれば、ブランディングや利益率の向上、企業成長にもつながっていくでしょう。

 

 

■まとめ

 

パーパスとは社会における「存在意義」を表す言葉で、企業が何のために存在し、どのような価値をもたらすのか、ビジネスの根本となる「志」や「信念」を指針とした企業経営を「パーパス経営」といいます。社会情勢の変化とともに自社ならではの価値創造を実践するパーパス経営の必要性が高まり、パソナを含めたさまざまな企業がパーパスを基軸とした取り組みを進めています。

 

社会課題の解決により顧客から信頼を獲得し、企業価値を向上させるパーパスは、今後ますます浸透していくと予測できます。これからの時代に不可欠な経営戦略として、いま一度自社のパーパスを見直してみてはいかがでしょうか。

 

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