2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月と段階的に施行されていきます。制度が複雑なため現場での正しい理解・対応が急務となっています。
本記事では、育児・介護休業法の成り立ちから、今回の改正の背景や目的、具体的に押さえておきたいポイントまで、わかりやすく解説します。
【監修】
株式会社パソナHRソリューション 副社長執行役員 兼
株式会社パソナグループ 常務執行役員HR本部副本部長
河合 幹彦
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育児・介護休業法とは、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」という労働者が仕事と育児、介護を両立できるように支援するための法律です。
1991年に育児休業法(正式名称「育児休業等に関する法律」)として成立し、1992年に施行されました。その後、1995年に「育児・介護休業法」に改正されました。
育児・介護休業法には、出産や育児、介護などの理由による労働者の離職を防ぎ、男女ともに家庭と仕事を両立できる雇用環境を整備する規定が定められています。
2021年6月に改正し、2022年4月1日から順次施行される育児・介護休業法は、男性の育児休業取得促進のための制度が盛り込まれ、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革の実現を目指す、昨今の社会情勢に合わせた休業制度になっています。
具体的にどのような内容か、以下で詳しく解説します。
関連記事:2023年4月施行「育児休業の取得状況の公表義務」について解説
2022年4月から段階的に施行される改正育児・介護休業法は、男女問わず育休を取得しやすい環境の整備を企業に求める内容になっています。
2021年に育児・介護休業法が改正された背景には、持続可能で安心できる社会をつくること、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革を実現することなどの目的があります。
具体的には、性別を問わず育児休業を取得しやすくすることを目指しており、特に世界各国と比較しても低い日本の男性の育児休業取得率、家事・育児参加率を上げることがねらいだといえるでしょう。
2020年の日本の男性の育児休業取得率は12.65%。女性の81.6%と比較するとかなり低水準です。厚生労働省が公開している「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」では、日本の夫の家事・育児関連時間は1.23時間。フランス、米国、イギリス、ドイツなどの先進国と比較して短かい時間です。
共働きが多数派となった現代の日本社会において、男性の家事・育児不参加は、出産意欲の低下による少子化や女性のキャリア形成・就業機会を阻む原因ともなり得ます。
男性の家事・育児参加率が高くなれば、女性に偏りがちだった家事や育児のバランスが是正され、男女雇用格差の改善や少子化の歯止めにつながることが期待できるでしょう。
2017年に公開された、内閣府経済社会総合研究所の研究者などによる「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係に与える影響」ワーキングペーパーでは、66.5%が「子育ての大変さがわかった」、50.7%が「夫婦でコミュニケーションをとる時間が持てた」、48.2%が「配偶者から感謝された」ことを実感しています。
出典:内閣府 男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響18ページ
育休取得によって育児への理解が深まり、夫婦の関係も円滑になる効果が出ていることがうかがえます。
2022年10月からは「出生時育児休業(産後パパ育休)」が創設されますので、父親として出産直後のタイミングで子供と触れ合う経験を積むことで、その後の子育てへより積極的になることが期待できます。
また、男性が家事・育児を行うことで、女性が職場復帰をしたり、2人目、3人目の出産を考えたりすることができます。第2子以降をあきらめていた家庭が家族を増やせるようになれば、幸福感が高まり幸せな家庭が増えることにつながるでしょう。
厚生労働省「男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集」の休業の取得状況別にみた、仕事に対する意識変化にも注目すべき箇所があります。
末子出生時に休暇・休業を取得した男性のうち、34.5%が「早く家に帰ることを意識するようになった」と回答。19%が「仕事の効率化を考えるようになった」と回答しています。男性の育休取得が普及すれば、企業の生産性向上にもつながると推測できます。
関連記事:マミートラックとは?意味や問題点、企業に必要な対策を紹介
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参照:厚生労働省 パンフレット「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」
育児・介護休業法改正2022のポイントを時系列でまとめました。改正前と改正後の違い、必要な措置を確認しましょう。
2022年4月施行の改正ポイントは「個別の周知・休業取得の意向確認・雇用環境整備の義務化」と「有期雇用労働者が育児休業・介護休業を取得できる要件の緩和」です。
なお、取得を控えさせるようなかたちでの周知・意向確認は、措置と認められないので留意しましょう。
2022年10月施行の改正ポイントは、「出生時育児休業(産後パパ育休)の創設」と「育児休業の分割取得」です。
今までの育休制度とは別に男性の「産後パパ育休」が新設されます。加えて男女問わず育休の分割取得ができるようになるため、各家庭や仕事の事情にあわせて育休がとりやすくなるでしょう。
2023年4月施行の改正ポイントは「育児休業取得率の公表の義務化」です。
(※)常時雇用する労働者(期間の定めなく雇用されている者/過去1年以上雇用されている、または雇入れ時から1年以上雇用されると見込まれる者)が1,000人を超える事業主には育児休業等の取得の状況について、年1回公表することが義務化されます。
一連の改正に伴い、就業規則の変更、社内への周知、労使協定の締結などが必要になりますが、各書類については厚生労働省が規定例を提示しています。
今回の改正で従業員はより柔軟に制度を利用することができる反面、より複雑化する制度に対して、人事は従業員の理解を促進する研修の導入が急務です。
実はこれまでの男性育休制度も内容自体はかなり充実していました。2018年のOECDの調査では、日本の男性育休制度は、育休取得可能期間も満額賃金に相当する給付金が得られる期間もトップクラスの長さです。しかし、充実した制度を活用できない状況が続いてきました。
数々の課題がありますが、中でも多くの日本企業の従業員が、休むことに罪悪感を感じたり休む人を批判的に見たりするマインドが根付いていることは、育休取得率が低い大きな要因のひとつだといえるでしょう。
まずは、制度の活用に向けて、育児・介護休業法について外部の各種研修サービスなどを取り入れ、メンバー層からマネジメント層まで、すべての階層で育休取得に関する理解を促進することが大切です。育休に対する周囲の理解が深まることで、社内に育休をとりやすい空気が醸成されるでしょう。
企業ごとに働き方改革の現状や課題は異なるため、オーダーメイドの研修サービスを活用し、オリジナルの研修カリキュラムを組んでもよいでしょう。自社にあった方法で必要な準備や周知、手続きを進めることが大切です。
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育児・介護休業法改正2022で男性育休取得を推進〜企業ができる両立支援~
男女がともに仕事と育児を両立し、誰もが活躍できる社会をつくるためには、どのような取り組みを推し進めるべきなのでしょうか。
男性育休取得を推進する改正育児・介護休業法のポイントや、企業ができるサポート・両立支援について解説しています。
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2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月と10月、さらに2023年4月と段階的に施行されていきます。法改正の目的の一つは男性の育児休業取得率を上げることで、その後の男性の育児参加のきっかけをつくり、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革の推進をおこない、男女とも仕事と育児を両立できるように支援する法律・制度です。
男性が育児休暇を取得したことで、「仕事の効率化を考えるようになった」という調査結果や女性が継続して働くことは、企業にとっても生産性向上など良い影響となります。
人事は、まず今回の改正に伴い従業員の理解を促進し、企業ごとの課題にあわせた研修サービスなども活用し、必要な準備や周知をおこなっていきましょう。
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