2023年01月10日 08:30 #女性活躍推進
近年、国が推奨し多くの企業が取り組んできた「ダイバーシティ」や「ポジティブ・アクション」。しかし、その進捗状況が可視化されることで、改めて日本企業の役員や管理職に占める女性の割合の低さや比率を上昇させる難しさが社会課題として注目されています。
社会が多様化した今の時代に女性管理職の比率が少ないままだと、生産性向上が難しい、優秀な人材の獲得ができない、社会的評価が低下する、かつ国内労働人口の減少に対応できないなどのリスクが考えられます。
この記事では、日本で女性管理職が少ない理由、女性管理職を増やすメリット、女性管理職を増やすことに成功した企業の取り組み事例を紹介します。
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世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダー・ギャップ指数の話題で、日本の女性管理職登用が遅れていることを認識している人もいるでしょう。
日本の総合スコアの順位は146カ国中116位。管理職における男女平等の項目では130位で、先進国はもちろんアジアの新興国よりも低い順位です。なお「教育」の順位は146カ国中日本が1位で、世界でもっとも教育水準の高い女性たちが活躍できていない現状があります。
2003年6月、小泉内閣は「2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という目標を掲げました。また、2014年の世界経済フォーラム年次総会の演説で、当時の安倍首相が改めて同じ内容を宣言しました。
しかし、進捗は目標数値にはほど遠く、2020年7月には「2020年代の可能な限り早期」にと期限を先送りすることが発表されました。
2022年7月の「令和3年度雇用均等基本調査」によると、管理職に占める女性の割合は部長相当職で7.8%(前年度8.4%)、課長相当職が10.7%(同10.8%)、係長相当職で18.8%(同18.7%)と、大きくは進展していない状況がうかがえます。
関連記事:男女賃金格差の開示義務とは?女性活躍推進法改正により企業が対応すべきこと
なぜ日本企業の女性管理職は増えないのでしょうか? 理由には以下が考えられます。
日本企業の多くは女性が出産、育児といったライフステージの変化に影響されず働き続けられる環境が整っておらず、女性社員が両立をあきらめて離職してしまう傾向があります。管理職に昇進する世代になる前に女性社員が辞めるため、社内に女性管理職のロールモデルがいない状況に陥りがちです。
日本には男女の性別役割分担意識が根強く残っています。企業では、男性の長期雇用は当たり前で管理職や主要業務を担うのは男性という考え方が主流です。家庭も同様で、共働き夫婦でも女性の家事育児の負担が大きい傾向にあります。
特に、企業の管理職登用を決める中高年世代にこの意識を持つ人が多いため、男性に比べ女性の昇進が遅いことにあまり疑問を持たず、女性の昇進に影響を与えている可能性が考えられます。
日本企業では、終身雇用と年功序列を前提としたメンバーシップ型雇用が長らくスタンダードだったため、勤続年数が長い人の評価や賃金が高くなる人事評価がおこなわれてきました。
育児介護休業法では、育児休業をしたことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないとあるものの、実態は育児休業取得期間を人事評価に含めない企業も少なくありません。その場合、育児休業を取得した女性社員は、同じ勤続年数の社員と比較して相対的に評価が低くなりやすく、管理職登用のチャンスも少なくなってしまいます。
ここ数年は「出世したくない」若者が増えており、理由として「負担の大きさと報酬が見合わない点」などがあげられています。管理職には労働基準法の規定が適用されないため、出世によりむしろ時間的・心理的負担が大きくなるデメリットが懸念されているのです。この状況が改善されないと、女性社員も管理職になると家庭を犠牲にしなくてはいけないと不安に感じ、昇進に意欲的になれないでしょう。
そもそも「なぜ、そこまでして女性管理職を増やす必要があるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、女性管理職を増やすことで企業はさまざまなメリットが得られます。
女性管理職が増えると組織に多様性が生まれます。結果的に、多様な働き方や労働環境の改善にもつながるので、人種・個性・価値観などの多様な人材がより活躍しやすくなり、ダイバーシティが促進されます。
ダイバーシティの促進はイノベーションの発露につながります。例えば、2017年のボストンコンサルティンググループの調査では、管理職の多様性のレベルが高いほどイノベーション収益(新しい製品から生み出される収益)が増加すると報告されています。
参照:Why Diversity and Inclusion Matter: Financial Performance (Appendix) | Catalyst
女性管理職の登用を促進するためには、人事評価の際に評価者の無意識下で生じる性別によるバイアスを正し、能力で評価される制度に変える必要があります。能力や実績を重視した公平で透明性の高い評価制度を構築できれば、女性に限らず多くの社員の納得度やモチベーションが高まるでしょう。
女性管理職がいる多様性のある組織は、女性管理職がいない多様性のない組織と比較して「5年以上の長期で勤続する予定」とする社員が40%以上多いという調査結果があります。
参照:世界「女性管理職比率」ランキング…先進国で圧倒的最下位、日本の「衝撃の世界順位」(幻冬舎ゴールドオンライン)
ロールモデルとなる女性管理職がいることで、女性社員は社内での長期的なキャリアプランを描きやすくなります。ライフステージに変化があっても働き続けようと考える社員が増えるので、人材の流出防止につながります。
ESG投資においては、女性管理職比率が高いことが良い評価につながります。また、女性管理職の比率の高さや登用に向けた取り組みは、顧客や求職者に「多様な人材の活用に積極的な企業である」というイメージを与えるため、市場での競合との差別化や優秀な人材の獲得につながるでしょう。
ここでは、女性管理職を増やす取り組みに成功した企業事例を紹介します。
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女性活躍推進に向け、プロフェッショナル人財を活用される企業様が増えてきました。
『必要な期間だけ』『最適な契約形態で』、高い専門性を持つ人財を活用することが出来ます。
ー「女性がキャリアプランを描ける人事制度を設計したい」
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従業員100名以下のサービス業A社は、出産や育児を機に退職する女性が多く、女性管理職が少ない状況を打破するために、ポジティブ・アクションの取り組みを開始しました。
取組内容:
・短時間勤務を続けながら課長、部長への昇進を可能にする
・有能な女性社員の管理職登用を増やす
・女性管理職が女性社員の相談にのる体制を作る
成果:
・女性管理職比率が25%から36%に上昇
・女性社員の定着率が高まり、事業拡大や業績向上につながる
従業員約2,000名を抱える事務サービス業B社では、女性社員が9割でありながら管理職のほとんどがグループ会社から出向した男性でした。B社では2012年から以下の取り組みを開始しました。
取組内容:
・女性管理職育成のため階層別研修
・育児休業からの復職者向け研修
・結婚、育児、介護と仕事を両立できるように19パターンの育児短時間勤務制度、勤務地域変更制度を構築
成果:
・2021年時点で課長以上の女性管理職比率が62%に向上
・女性活躍推進企業認定の「プラチナえるぼし」を獲得
関連記事:【女性活躍推進法】プラチナえるぼしの認定基準と行動計画の立て方
日本企業に女性管理職が増えない理由には「出産や育児などのライフステージの変化により継続就業が難しくなること」「育児休業を取得した社員の人事評価が相対的に低くなりやすいこと」「管理職の業務負担が過剰なこと」などがあげられます。
女性管理職の登用を増やすためには、勤務制度や人事評価制度の見直し、管理職の業務負担軽減、研修の充実などの多角的なアプローチが必要となるため、短期・中長期の計画を並行して進めていく必要があります。
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資料ダウンロード:⼥性活躍推進に向けたご提案
女性管理職を増やすためには外部の支援サービスを活用するのも一つです。
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